唐笠(とがさ)谷は奈良県五條市大塔町の猿谷隧道(ずいどう)の東の谷である。今回の目的は旧国道沿いの「小姫滝」の下流にあると予想される「鳴谷の滝」の存在を確認するためである。この谷へのアプローチ方法としては、(1)旧国道から右岸を下降する、(2)旧国道から左岸を下降する、(3)新猿谷トンネルの南から下降する、の3つが考えられる。(1)については、猿谷隧道東口から下降できる橋やロープがストリートビューから確認できる、(2)は等高線の間隔はやや広い、(3)は唐笠谷河口までの距離が近いなどのメリットがある。
現地に着いて(1)の状況を確認すると、傾斜がかなり急で、ロープがどの付近まであるかが不明であった。(2)については、R168の看板付近まで移動すると下方に滝が確認でき、傾斜もそれほどきつくなかった。スパイク長靴を履き、左岸を下りて行くと幅広の滝が見えた。川へは微妙な段差があったのでザイルを出したが、慣れた方なら問題ないだろう。道から見える幅広滝は、3段瀑でまずまずの景観である。これが主瀑で、「鳴岩の滝」と推定した。下流にも小滝があり、この谷の河口まで下りながら、谷の様子を観察した。
ここで、滝名鑑4000の「鳴岩の滝」にある辻堂口の人談を読む。「滝の正面の尾根に岩屋があり、滝音が岩屋に響いて鳴る様子から”鳴岩”という。昔はこの穴に隠れてバクチをしていたと伝わる。」 3段瀑の上方は尾根になっており、岩屋を小姫滝の前の空間とすれば、この滝を「鳴岩の滝」してよいのではないだろうか。
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