和歌山県にある「日本の滝百選」は「那智の滝」、「桑ノ木の滝」、「八草(はそ)の滝」の三本です。この中で「八草の滝」のみ未訪でした。和歌山県白浜町は滋賀からかなり遠いのと、この滝の評判がいまいちであることから後回しになってしまいました。それにしても、なぜこの滝が選ばれたかが不思議です。この滝を見る場所は通常、日置(ひき)川を挟む対岸であり、滝壺まで行くのはそれなりに困難で、観光客を呼び寄せる要素もあまりありません。
この滝の昔の名前が「品瀬川滝」であることは、滝前へのルートの途中にある水源かん養保安林の看板でわかる。また、八草谷がこの滝の東方であることは地形図にも記されている。それでは、なぜこの滝の名称が「八草の滝」になったのであろうか。八草谷には本当の「八草の滝」があることは、佐竹さんが書かれている。疑問を解く鍵は百選選出のための基礎資料となったここの和歌山にある。ここには「品瀬川滝」が「八草の滝」、「鍋津呂谷の滝」が「一の滝」と記されている。なお、私にはこの資料に「八草の滝」と記されているのが誤記であるか、大字久木(ひさぎ)字八草で意図的に広義に名付けられたのかはわからない。
さて、遠望では満足できない私はやはり滝前へ行くことを選択した。現在、法面保護やトンネルの排水工事が進行中なので、車は久木橋の少し手前に置いた。作業されている方に滝へ行く旨を告げ、トンネル手前右の階段を下りる。ここから旧県道を進むが、倒木や斜面崩落でかなり歩きにくい。手掘りの隧道(ずいどう)を越えてしばらくすると、川が横切っている。ただ、この日は水量が多く、長靴では少し厳しい。仕方なく、ズボンをまくりあげ、裸足で渡渉した。この後も倒木で通過しにくかったり、川側傾斜した足場の狭い場所などあって緊張する。倒木が積み重なったコンクリート橋に到着すると、上流に滝が見える。ここからは特に問題はない。高度感があり、天から水が降ってくるようだ。さすがは「百選の滝」で、ここまで来ないとこの滝の良さは実感できない。この日の水量はまずまずだったが、もっと凄い日に行かれた方も報告もある。
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