「高丸の滝」は兵庫県新温泉町岸田の青下(あおげ)地区にあり、秘境の滝であったが地元の方によって滝道が整備されたという情報が頭の中にあった。それなら、滝の位置と駐車場所くらいの確認でいいかと、いつものように手抜きの下調べである。
　予定の駐車場所に車を置き、午後三時頃から歩き始める。Aの分岐付近に長老がおられたので、道を尋ねる。「高丸の滝はここを進めばいいんですね？」と聞くと、長老は「どこから来なさった？」「登りはかなり急だ。」「クマの対策はしておるか？」と心配そうに聞く。私は「滋賀からです。まあ、4時半頃にここを帰って来ればよいです。体力には自信があり、熊鈴、熊笛も持っています。」と答える。「気を付けてな。」と長老。
　A分岐からB分岐に進み、左折する。しっかりとした道がある。「川沿いに進むんですね。」と長老に言った時に不思議な顔をされたの思い出す。川ではなく、水路のようだ。C分岐にもしっかりとした道しるべがあり、滝まで600mと書いてあった。ここから左岸を登るが、かなり急で少しペースが落ちる。しばらくして、獣臭がした。すると、右方約20m先に熊がいるではないか。私の存在にびっくりしたように逃げる。私は「あっちへ行け！」という気持ちで熊笛を吹く。
　もう大丈夫だろうとさらに上流に進むと、川には小滝が増えてきた。ただ、踏み跡がかなり薄い。そして、デコボコの黒い滝で行き詰まった。「高丸の滝」は上部に見えているが、この巻きがなかなか手強い。少し粘ったが、暗くなってきたので、「高丸の滝」の滝前に行くことを諦めた。なお、下流の滝については帰宅後に名前を知った。